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2020年6月 9日 (火)

思いはつながる

先日、仕事で大変にお世話になった方が、病気で亡くなりました。

その方とは仕事観が非常に似通っていたので、その方と仕事をしていた頃は、あり得ないほど忙しかったけれど、充実していました。

いつも大声で強引だけど、本当は繊細で照れ屋で、誤解されやすい人でした。

 

思えば、多くの方を見送ってきました。

 

その昔、ある駅の周辺は、ノラ猫だらけで有名でした。

通勤帰りの多数の方が投げエサをしているようなエリアで、手のつけようがなく、地域の多くの方が困っていました。

「ただひとり、熱心に去勢不妊手術をしている女性がいる」というウワサだけがありました。

 

何年も経った頃、ひょんなことから、ウワサの当人に出会うことができました。

以来、ことあるごとに一緒に行動し、共に苦労し、また喜びも分かち合いました。

 

その方はノラ猫に対して深い慈しみの心を持っていました。

同時に、人の心の寂しさや怒り、やり切れない思いにスッと寄り添う繊細さもお持ちでした。

 

すべてのノラさんの手術が終わり、エサやりさんのご理解、ご近隣のご理解も深まりました。

かつてカンカンに怒っていた人も、すっかり彼女を信頼し、相談をする間柄になっていました。

ご近所回りをすると、「あの方は素晴らしい」と皆が口を揃えて仰るのでした。

 

ところが、急に全く連絡がつかなくなり。

ご友人に聞いても、詳細は分からないが入院しているらしい、と。

何度も留守番電話にメッセージを残していたところ、1回だけ、「ちょっと今動けないけど、またよろしくお願いします」という電話がありました。

 

数か月後、亡くなったことを知りました。

無念の棘が、今も私の心に突き刺さったままです。

 

もう、あの駅の周りにはノラ猫問題はありません。

ご友人たちがしっかり彼女の思いを継いでくださっています。

 

亡くなった後も、ご近隣は「本当にあの方は素晴らしかった」と仰っていました。

ある動物病院の先生から、「あの方の活動を継いでいる方はいるのですか?」と質問されました。

ご友人が後を継いでいることをお伝えすると、先生は「では、ご友人に、あの方と同じ料金で手術します、とお伝えください。」と仰いました。

この先生は、いわゆるTNR協力獣医さんではなかったので、事情を全然知らなかった私は、とてもびっくりしたのでした。

 

外猫への温かい眼差し。

苛立つ人の心に寄り添う懐の深さ。

地域の平和を願う思い。

 

どこまでもまっすぐな気持ち、誠実さが、人の心を震わせ、そして街を変えていきます。

口の上手さのような不純物は、むしろ邪魔かもしれません。

私はそれを、彼女から教えてもらいました。

 

あれから何年経ったのでしょう。

どうしても忘れられないのです。

 

 

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